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早期英語教育の是非

外国語学部英語学科 教授 山本文雄先生

Q: 3歳の子供がいるのですが、将来を考えると、今のうちに英語を教えておく方がいいだろうと夫婦で話し合っています。実際のところ、 早期英語教育は必要でしょうか。
A:  必要とする見解が強いと言えるでしょう。諸外国の小学校教育を概観すると、ほとんどの国で外国語が教科として教えられていることが分かります。そして、外国語として教えられる言語はいろいろありますが、やはり、英語が圧倒的に強いようです。

 しかし、日本は世界のこの趨勢にかなり遅れています。日本の小学校においては英語は正規の授業科目ではなく、異文化(あるいは国際)理解の授業の一環として「英語活動」と言う形で個々の小学校の判断で取り入れられているのが現状です。

Q: どうして世界の国々はなぜ外国語教育を早期から始めるようになったのでしょうか。さらに、なぜ英語を重視するようになったのですか?
A:  それは、国際化が進む世界の中で国および個人が繁栄し続けるには諸外国とコミュニケーションを円滑に行うことが必須条件であり、これを実現する言語は世界中で通用する英語だと考えられているからです。

 一説に拠りますと、英語を母語として使用する人は4億弱、second-languageとして使用する人は3億弱、ところがforeign-languageとして使用する人は4.5億(1980年調査)から7億(2000年)へと増加の一途をたどっています。

 
Q: それでは、なぜ早期開始が必要なのでしょうか?
A:  それを脳生理学の見地から説明しましょう。第2言語習得には一定の時間的制約、すなわち臨界期があるという仮説があります。ただ、臨界期説には異論があり、最近は敏感期という考え方で第2言語開始は8-9歳頃まで、つまり、小学校段階が適時だとされています。特に、音韻の習得は年令が低いほど効果があるという結論が出ています。

QA-20-01 次に、児童の心理面から開始時期を検討しましょう。言語習得には模倣能力が不可欠です。音を覚え、単語を覚える過程では模倣を繰り返す必要がありますが、模倣能力が最高潮になる時期は4、5歳から8歳までであるとされています。この時期はまた無邪気で恥ずかしさをまだあまり感じないことから繰り返しの練習にも抵抗がありません。

 発達心理学で「9歳の壁」という言葉がありますが、9歳を越えると理屈っぽくなり自然な言語習得が困難になります。また、外国語を知ることで、母語への理解が深まり、他の教科についても優れた成果が上がっているという調査結果もあります。自国文化についても、異文化を知ることで、より深い理解を可能にすることも指摘されています。

 このような事情から日本においても小学校から英語が正規の教科として導入される時期が真近に迫っているようです。


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  会報Vol.20(2007年8月)