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 日本語の敬語について

外国語学部日本語学科 教授 山崎恵先生

Q: 「○○部長がおっしゃられました。」と言ったら、先輩に敬語の使い方がおかしいと言われました。自分では尊敬表現にしたつもりですが、誤りなのでしょうか? 
A: QA-22-01. 動詞を尊敬表現にするには、「お(ご)・・・になる」や「・・・られる」などの形式がありますが、「おっしゃる」は「言う」の尊敬語としての専用語です。ですから、既に尊敬語である「おっしゃる」にさらに別の尊敬語形式「・・・られる」を重ねて使っていることになります。

 このような一つの語に対して同種の敬語化を二重に行うことを二重敬語といい、一般に不適切だとされます。パーティーの司会者が「どうぞお召し上がりになられながら、スピーチをお聞きください。」と言うのを耳にしたことがありますが、これも二重敬語です。「お召し上がりになる」は慣習として定着しているのですが、さらに「・・・られる」を重ねて使っているのが問題です。つい尊敬語を使わねばと思うあまり、過剰敬語になってしまったのでしょう。 

Q: 「○○部長が申されました。」と同僚が言っているのを聞いて、誤った言い方だと思ったのですが、これはどうでしょうか? 
A:  この表現を誤りだと思うのは、目上である部長の行為に謙譲語の「申す」を使い、その「申す」に尊敬語の「・・・られる」を付けているため、矛盾していると感じるからでしょう。ところが、「申される」が誤りでなくなる場合もあります。

 2007年2月に文化審議会が答申した「敬語の指針」では、「尊敬語」「謙譲語1」「謙譲語2」「丁寧語」「美化語」の5種類が示されており、「申す」は「謙譲語2」に含まれます。この「謙譲語2」というのは話し相手に対する敬語で、丁重語とも言われます。

 つまり、「申す」は聞き手に対して改まりの姿勢を表す語だと考えると、その尊敬語形式「申される」が国会審議や報告会など重々しく硬い改まった場面で実際によく使用されているというのも頷けます。 

Q: 敬語を正しく使わなければと思うと緊張して、どう話したらいいのかわからなくなってしまいます。どうすればいいでしょう? 
A:  文化庁の「国語に関する世論調査」でも「正しい敬語を使っているか自信がない」とする人が特に20代女性や30代男性には多いという報告があります。このように敬語は一般に難しいと考えられているようですが、それは、よその会社の人との会合ではどんな敬語を使ったらよいか、目上の人と話す時はどんなことを話せばよいか、などといった、場面による使い分けや、そのような場面でのコミュニケーション自体が難しいと感じられるからではないでしょうか。

 自分の敬意が相手に伝わればいいと割り切って、多少の誤りはあまり気にせず、敬語の使い方に慣れ親しむことが大切だと思います。 


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  会報Vol.22(2008年8月)