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身に覚えの無い請求書が届いたら

法学部 特別教授・弁護士 白出 博之先生

Q: 次のようなメールが送られてきました。
「(株)カクーの鈴木と申します。この度、お客様ご使用のPC端末より以前ご登録頂いた総合情報サイトから無料期間中に退会処理がされていない為、登録料金が発生し現状未払状態のまま長期間放置されています。本通達から翌日の正午までにご連絡を頂けない場合は、認可ネットワーク認証事業者センターを介入し、発信者端末電子名義認証を行い利用規約に伴い、お客様の身辺調査に入らせていただきます。退会処理、料金詳細については、下記までお問合わせ下さい。電話番号03-××××-○○○○、担当鈴木、営業時間9:00~ 尚、ご連絡なき場合明日正午より直ちに手続開始となります。」
しかし、そのような情報サイトを利用した覚えはないのですがどうしたらいいでしょうか。
 
A:  電話、手紙、電報、電子メールによる架空請求の被害が増加しています。いわゆる振り込め詐欺では、家族や知人など親しい間柄を装ったものが多かったのですが、さらに債権回収会社だけでなく、内閣府、法務局、税務署等の行政庁や裁判所、弁護士会ないし弁護士名をも偽った新たな手口にまで拡大しています。いずれのケースも消費者の勘違いに乗じたり、あるいは不安感をあおりトラブルにはかかわりたくないという心理をついて金銭を得る非常に悪質な手口ですが、相手の正体が不明なため、いったんお金を振り込んでしまうと取り戻すのは著しく困難です。

 したがって、①身に覚えのない請求をしてくる相手には絶対に連絡しないことが大切です(なお「請求に心当たりがない場合は確認・訂正のために連絡を請う」と注意書きして連絡するよう仕向ける例もある)。なぜなら、いったん相手方に電話連絡等をしてしまうと、まず被害者側が心配・不安に陥っている等の心理傾向を知られてしまい、番号通知により電話番号も把握され、本人確認等と称してまだ知らない氏名・住所等をも把握されるだけでなく、口頭であっても債務存在確認と支払の確約等を電話録音して証拠化され、さらには法律用語で混乱させながら脅迫的な言葉で畳みかけるなどまさに相手方の思うつぼとなり、連絡した被害者側はきわめて不利な状況に陥りやすいからです(なお「いくらなら直ぐ払えるのか」「今日中に払うなら特別にサービスして半額にする」等と軟化した態度で困惑から逃れたい一心の被害者に支払いを応じさせておきながら、それを法律上の追認ありとして、後日に残額請求してくる例もあります)。したがって、現実に利用していない以上は脅し文句にひるまず、かつむやみに連絡もしないことです。

QA-24-01 いわゆる振り込め詐欺等への対策としては、これを相手にせずに放置することが強調され、これが一般化したことを逆手にとった新たな手口が、現実に裁判所の少額訴訟制度や支払督促を用いて架空債権の支払いを求めてくるケースです。すなわち、身に覚えのない請求だからといって、当該手続に異議や答弁もせずに放置すると裁判所は原告主張の請求を認めて支払いを命ずる裁判がなされてしまう可能性があります。したがって、②発送元が裁判所である書類が届いた場合(通常は裁判所所定の封筒で特別送達の形態です)にはこれを放置せず、裁判所に確認するか、弁護士や消費者センター等に相談し、正式手続なのであれば訴訟上の適切な対応をとる必要があります(なお、上述した官公庁名での新たな手口であれば当該官公庁に直接問い合わせて事実確認し、弁護士名での請求であれば日本弁護士連合会の検索ページで当該弁護士が実在するかを確認することで、詐称したものかどうか判断できます)。そして③当該請求のメールや手紙等は後日の紛争に備えて証拠として保管すること、④悪質かつ執拗な連絡がある場合は警察に被害届をするとともに、⑤契約先プロバイダーや携帯電話会社の迷惑メール対策サービスの利用も検討しましょう。 


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  会報Vol.24(2009年8月)