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赤ちゃん返りについて

外国語学部 言語教育研究科長・教授 平岡 清志先生

Q: 子供が1歳と9歳の子供が2人います。8歳もはなれているのですが、上の子が時々、反抗的になったかと思えば、抱っこしてほしいといってきます。下の子がぐずっているときに限って甘えてくる事と、『大きいのに』と思ってしまい、十分に要求に応えてやれません。すると余計に下の子に暴言を吐いています。ついつい叱ってしまいますが、本当にこれでよいのか考えてしまいます。どう対処すればよいのでしょうか? 
A:  9歳といえば小学校3年生です。本来なら弟や妹が誕生してもあまり動じない年齢ですが、お尋ねの内容から見れば、明らかに退行現象のように思えます。つまり幼児期の行動に返ってしまう現象です。今まで親を独り占めして可愛がってもらっていたのに、弟妹の誕生によって今までのように「親から可愛がってもらえない」という不満を持つ、いわゆる“フラストレーション(欲求不満)に対する反応“と考えればいいと思います。妹や弟が生まれたときによく見られる行為で、この例のように、大きくなっているにもかかわらず弟妹を世話をしているときにそれを阻止するかのごとく「抱っこして」といったり、親に甘えてきたりする。また夜尿を再発したり、指しゃぶりや注意引き行動(退行現象)をしたりする。また場合によっては、下の子の顔をたたいたり、暴言を吐いたり、頭の上に馬乗りになったりして泣かすこともある(攻撃行動)。こうしたフラストレーションによる行動を欲求不満攻撃仮説とか欲求不満退行仮説と言います。よくある行動で、決して珍しいものではありません。次第に成長していくのに伴ってこうした行動傾向は消えていきます。

QA-26-01 だけど、親にとってはそういう光景は見てはおれない。親から見れば「兄(姉)ちゃんだのに、・・・」とか「今までかわいがってあげたのに、辛抱しなさい」となるのでしょう。しかしそれは親の考えであって、9歳や10歳になっても「親の愛情を今までどおり独り占めしたい」「ぼくも私もお母さんからかわいがって欲しい」と思うのはごく自然な欲求と思われます。たいていの家庭では、こう言いながら、兄ちゃんやお姉ちゃんをなだめすかしして辛抱させ、大きくなっていくのである。「これが普通の家庭での兄弟の姿で、心配すること無いです」と言うのが本来の応えでしょう。しかし、これでは親としては納得いかないでしょう。兄弟である限り、仲良くして欲しいし、弟(妹)想いの兄(姉)ちゃんであって欲しいし、兄(姉)ちゃん想いの弟(妹)であって欲しいと思うでしょう。そういう仲の良い兄弟姉妹にするにはどのように育てればいいのか?

 心理学の実験で、詳細は忘れましたが、宿恨の仲といわれるネコとネズミに、それぞれが一緒に協力して一つのレバーを押せば、その時にのみ報酬が得られるようにした。その結果、ネコとネズミは、常に一緒にレバーを押すようになったという。この結果から言えることは、兄弟姉妹が何かを一緒にする、たとえば積み木を協力し合って組み立てるとか、ままごとを一緒にしている時に兄弟姉妹を大いに褒めてやるとか、ご褒美にどこかへ連れて行ってやるとかする。すると仲の良い兄弟に発展する。

 弟妹がまだ赤ちゃんの場合は、兄姉が弟妹を世話をするように仕向けることである。弟妹が泣いたときにミルクを飲ませてやるとか、おしっこをした時にオムツを替えてやるとか、兄(姉)ちゃんがお母さんに代わって弟妹の世話をするように仕向けていくのである。兄姉がまだ小さくてそんなことはできないと言うかもしれないが、お母さんやお父さんが手伝ってやり、兄姉がすべて弟妹を世話をしたかのごとく、親が弟妹に代わって「お兄(姉)ちゃん、有難う、有難う! お兄(姉)ちゃんがしてくれて、気持ちよくなった」と代弁するのです。そうするとお兄(姉)ちゃんは気を良くして、得意気になってまたしてやろうという気持ちになる。そして、弟妹を好きになるだろうし、親代わりをしてくれ、将来的にも仲の良い兄弟姉妹ができる、親子以上に仲の良い兄弟姉妹ができることは間違いないでしょう。

 
Q:  いわゆる『赤ちゃん返り』は何歳までの子がするのでしょうか? 
A:  赤ちゃん返りとは、子供がまるで赤ちゃんのような行動をとった場合にこれを「赤ちゃん返り」といいますが、一種の退行現象です。弟や妹が生まれたとたん、哺乳瓶でミルクを飲みたがったり、おもらしをしたりと、突然赤ちゃんに逆戻りしたような行動を起こすことがある。これは、3~5歳位の子供によくみられる、「もっとかまってほしい」という焼きもちの表れです。赤ちゃんに慣れてくれば自然に消えていきます。

 
Q: 赤ちゃん返りをしている子供にはどのように接してやればよいのでしょうか?またそれは子供の年齢によって接し方は変えたほうが良いですか? 
A: QA-26-02 赤ちゃん返りがみられたら、それは「親の愛情を求めている」表れであり、それに対しては、しっかり抱きしめてやるとか、弟妹と一緒に抱きしめてやるとかもいいでしょう。「兄ちゃんだから、辛抱しよう」というようなことはあまり薦められる方法ではありません。かえって、欲求不満を助長することになる。弟妹が眠っているときなど、たまには兄姉だけとの時間を作ってやることもいい。同時に上記で述べたように、お母さん代わりをさせてやることです。但し兄姉がまだ小さいときは、お母さんの補助のもとです。きっと弟妹想いの中のいい兄弟姉妹になります。

 ご質問の9歳くらいの子になれば、ミルクを飲ませてやったり、オムツを替えたりもできますし、歩くようになれば手をつないでやることもできます。“弟妹の世話係りはお兄(姉)ちゃん”、と役割を決めてやってもいいのです。 


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  会報Vol.26(2010年8月)