税に関するお話について | |
経済情報学部 教授 横山直子先生 |
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Q: | 税金は、消費税だけでなく所得税、法人税、相続税、酒税など非常に多くのものがありますが、なぜこのようにたくさんの税金があるのでしょうか。 |
A: | 税金は、経済や私たちの日常にとても密接に関わるものであり、どのような税金の仕組み、税制であることが望ましいのかを考えることは非常に重要です。そこで税には租税原則というものがあります。租税原則には公平性、中立性、最小徴税費の3つの原則があります。たとえば日本の所得税は、所得が大きいほど税率が高くなるという累進税の構造になっており、所得が高い人ほど大きい税負担をするという公平性を満たす税であるといえます。一方、日本の消費税は、消費に対して一定の税率で課税されるため、一般に所得が低い人ほど所得に対する税負担の割合が大きく(逆進性)なってしまいます。また、税の中立性の原則というものがあり、家計の消費や労働、企業の生産に税が与える影響・効果に注目し、税は資源配分に対して中立的であるべきということも重要です。中立性の原則からみると、すべての商品に課税される一般消費税は個別消費税に比べると望ましい税であるということがいえます。さらに、最小徴税費の原則があり、税の徴税・納税に関する徴税費(徴税者側の費用)と納税協力費(納税者側の費用、納税者が税理士に支払う税理士への報酬など)はできるだけ小さくすることが重要になります。つまり、これらの租税原則を満たすためには様々な税が必要ということになるのです。 もう少しわかりやすくみると、たとえば所得税、消費税、相続税は、それぞれの特徴を有しています。所得税は高い所得の人は大きな税負担をする、また、控除があることで細かく配慮ができるなどのメリットがある一方で、累進税率のため勤労意欲が低くなる可能性があるなどのデメリットがあります。消費税は、安定的な税収が予想できるというメリットがある一方で、所得が低い人ほど所得に対する税負担の割合が大きくなるというデメリットがあると考えられます。また、相続税は資産の格差を是正することができるというメリットを有しています。 このように望ましい税制のためには、様々な税金が必要であるということになります。 |
Q: | 税金の役割は、どのようなものなのでしょうか。 |
A: | 税金は税収を確保するという役割とともに様々な役割を果たしています。1つは公共財を供給するための財源としての税についてであり、これは資源を配分するための役割です。税金には、また、所得税のように所得格差を是正する、相続税のように資産格差を是正するなど所得再分配のための役割があります。さらに税金には、減税や増税など景気に応じて政策を行うなど経済を安定化するための役割もあります。 |
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会報Vol.27(2011年1月) |